福岡県警早良署は2019年8月20日、わいせつな画像を送信したとして、県迷惑防止条例違反(卑わいな行為の禁止)の疑いで、福岡市西区の男性会社員(37)を福岡区検に書類送検した。
大阪でも2018年8月、45歳の男が電車内で自身の公序良俗に反する画像を女性のスマホに送り付けたとして、迷惑防止条例違反で書類送検されています。
この2つの事件について、ともに犯人の男は動機について「受信した女性が嫌がる顔や、恥ずかしがる顔を見たかった」と話しているようです。
この事件はレアケースではなく、他にも若い女性を中心に同様の被害を受けた相談が日本各地で増えているようです。
自分のスマホに卑猥な画像や映像が届く
いま、女性を狙ったこのような新たなサイバー犯罪や迷惑行為が横行しています。
実際に被害に遭ったことがあるという、20代の女性がTVの取材に次のように答えています。
「私がスマートフォンを操作していたら、画面に男性の下半身が映った写真が、いきなり画面に映し出されてしまって。恐怖もあったのですけど、どちらかというと怒り」
この女性の場合も、電車に乗っている際に、スマートフォンを見ていたところ、突然男性の下半身が映った写真が、画面に表示されたといいます。
iphoneのAirDrop機能を悪用の迷惑行為
SNS上でも同じような卑劣な被害を受けたことが数多く投稿されています。
このような新たなサイバー犯罪や迷惑行為は、iphone等appleの端末に搭載されているAirDropエアドロップという便利な機能を悪用しています。
こんなのTLに載せるもんじゃないけど人生で初めてエアドロ痴漢にあったのでツイートさせてください()
どこの誰が送ってきてるかわかんないから怖いね推しメンに送るリプ打ってたのにさ!あほ!!! pic.twitter.com/8z2je8FVKT— ゆーな (@Hi_0426r) August 5, 2019
初めて電車の中で股間の写真送られてきた、ホントにあるのねエアドロ痴漢、ぶちのめしたろか pic.twitter.com/qWXBN9of8E
— 鈴木 (あ) (@BellTree0518) July 23, 2019
あなたの至近距離10m以内にいる誰かから、あなたの反応を楽しみながら、悪質な痴漢行為を受けてしまうのです。
そしてこの悪質なエアドロ痴漢行為は捕まえることが困難です。
iphoneのAirDropエアドロ機能とは
iphoneのAirDropエアドロップとは、いったいどんな機能なのかご説明します。
AirDropエアドロはiPhoneをはじめ、Appleの端末に搭載されている機能で、画像や映像などのデータを端末同士でギガを使わず送受信することが出来ます。
面倒な設定を行わなくても、横にいる友人のiphoneなど、半径約10メートル以内の受信可能な端末を自動で探し出し、端末間で簡単に直接データをやり取り出来る、とても便利な機能です。
実はAirDropエアドロ機能を便利に使える仕組みを悪用しているのです。
AirDropエアドロの設定「すべての人」は危険
AirDropエアドロは、約10m以内にある通信可能な端末を自動で探し出し表示します。
通信可能な端末とは次の通りです。
- AirDropの設定が「すべての人」から受信するようになっている。
- Wi-FiとBluetoothがONになっている。
- インターネット共有をしていない。
Wi-FiとBluetoothがONになっている事はあると思います。
Wi-Fi機能は常にONにしたままの人がほとんど、最近ではBluetooth®接続のイヤホンなどを使っている人も多く、そのような場合Wi-FiとBluetooth®がONになっているはずです。
インターネット共有(テザリング)をいつも行っている人も少ないでしょう。
よって、AirDropの受信設定を「すべての人」にしたままにしていると、10m以内に居る全く知らない人から迷惑な画像や映像が送りつけられる、エアドロ痴漢にあう危険性があるのです。
実際には、自分のiphoneなどにいきなりデータが送り込まれて保存してしまうことはありませんが、「こういう画像を送るリクエストが来ていますが、どうしますか」という確認の通知が、否応なく画像付きで表示されます。
公序良俗に反する不快な画像付きの確認通知を見ただけで、嫌な気持ちになりますし、なぜそんな気持ち悪い画像が自分のiphoneにいきなり表示されるのか怖い気持ちにさせられます。
電車に乗ってたらエアドロ痴漢されたんだが!?💢💢
3回もエロ画像送られてきたんだが!?💢💢💢 pic.twitter.com/mOOH2u9Mpo— ずいずい (@zuizui19411208) August 7, 2019
メッセージも画像化すれば送れる
送られてくるのは公序良俗に反する不快な写真画像だけではありません。
メモ帳などにメッセージを書いて、それをスクショした画像だってエアドロで送ることが出来ます。
そのメッセージに、あなたが読みたくない公序良俗に反する卑劣な事を書いて、あなたを困らせて喜ぶ犯罪者がいないとは言い切れません。
あなたの名前を痴漢に知られる恐れもある
このAirDrop機能を利用すると、通信すべきiPhoneがどれなのか見分けるために、iphoneなどに設定されているユーザーの名前を表示します。
エアドロ機能によって、自分の名前が痴漢に知られてしまう恐れもあります。
10m以内という至近距離から、迷惑な画像を送りつけられて動揺している女性を見つけることは難しくはないでしょう。
至近距離に居る正体不明の誰かから不快な画像を送ろうとされるだけなら、恐怖というより怒りだけかもしれませんが、自分の名前も知られてしまい、名前の入ったメッセージ画像まで送られてくるなら、怒りだけでは済まなくなります。
自分の後ろ姿をエアドロで送りつけられる恐怖体験も
俳優の加藤諒さんは、仕事後新幹線の中でリラックスしていると、突然「スマホをいじる今の自分の姿」をエアドロで送りつけられたと告白している。
振り返って後ろを見たが、誰が送り付けたか特定できず、ゾッとしたという。
「自分のプライベートに急に入ってこられた感じで、すごく怖かった」と恐怖を振り返った。
男性でも気持ち悪く怖いとさえ感じるのだから、女性ならなおさら恐怖だろう。
自分の後ろ姿をエアドロで送りつけられるということは、犯人にはあなたの後ろ姿がバレているということです。
実際に人の多い場所でAirDropを試した
私自身は不必要な通信機能や自身のSNSアカウントが検索されてしまう設定は全てOFFにして用心しているので、今回の報道を見て、「まさかそんな不用心に誰にでも自分のiphoneの存在を教えるような事は、ほとんどの人はしていないはず」と思いました。
AirDrop機能を使って送信できるiPhoneが近くにない場合はこのような画面になります。
実際に試してみても、きっとこのような画面になると思っていました。
しかし、実際に人の多い場所でAirDrop機能を使うと、いとも簡単に何台もの受信可能なiphoneが検出されました。
次々にAirDropエアドロ機能が自動的に探し出し通信スタンバイになった端末のユーザー名が表示されます。
なかには一見して女性だと分かるユーザー名もあります。
想像以上に多くの人がAirDropの設定を「すべての人」から受信するという、危ない設定になっている事にとても驚きました。
エアドロを使いこなしている人ほど、「すべての人」から受信する設定にしているでしょう。
現在はまだ、まさか至近距離にいる誰かから、エアドロを使って自分のiphoneに卑猥な画像を送りつけられる危険があることを分かっている人が少ないために、今回のような犯罪、痴漢行為を行いやすい状況です。
警察は、人が集まる場所でiphoneのAirDrop機能を使った迷惑行為が行われる場合が多いので、人込みや混雑した電車等では、特に注意をしてほしいと呼び掛けています。
フェイスブックで手当たり次第に電話番号を検索して、偶然表示された女性に迷惑電話を掛けていた犯人が逮捕されたという報道がありました。
LINEで電話番号検索してたまたま見つかった相手にメッセージを送りつける迷惑行為も行われています。
しかし今回のエアドロを悪用した事件は犯人が今自分のすぐそば10m以内に確実に居るという怖さがあります。
フェイスブックやLINEで自分の個人情報を晒さないことはもちろん、iPhoneのAirDropのように、すぐそばにいる不特定多数とつながってしまう機能にも十分注意して、便利な機能を安全安心に使いこなして下さいね。
実際に体に触られる痴漢は防ぐことが難しくても、エアドロ痴漢、AirDrop痴漢は、あなたが気を付けていれば100%防ぐことが可能です。
痴漢だけでなくスカウト行為にも悪用されるエアドロ機能
最近はエアドロ痴漢だけでなく、ガールズバーやキャバクラのスカウトにエアドロ機能が悪用されるケースもTwitterで報告されています。
エアドロ痴漢ならぬエアドロスカウト食らった pic.twitter.com/Y1uJzltSDz
— 夜職さんねんせいちゃん (@mfmfmfen) August 2, 2019
最近は高校生が友人同士エアドロで画像や動画などを送りあうことが多くなっています。
エアドロはギガを消費せずに大きなデータをやり取りできる優れた機能ですが、くれぐれもAirDropの受信設定を「すべての人」にしたままにしないようお気を付けください。